2012年4月24日火曜日

習字の先生

同級生のおじいちゃんが習字の先生をしているから
行ってみたら?
と母に勧められて通い始めた。

ちょっと嫌味っぽいけど優しい奥さんと、
穏やかで優しいおじいちゃん先生。

小学3年生の5月の課題は「ちまき」だった。毎年だった。
すると先生はいつも
「ちーまーきー食べたーべ 兄ちゃんが〜 はかぁってくぅれぇた せぇのぉ〜たーけ〜♪」
と、そのワンフレーズだけを
よく口ずさんでいた。
フルコーラスは聞いたことが無かった。

私は元々字を書くのが好きだったので、
何枚でも書き放題の教室はとても楽しかった。

帰るときには奥さんがお菓子をくれた。
電話は黒いダイヤル式の電話機だった。

高校進学と同時に辞めたが、
結局陸上部を辞めて書道部に入った私は
度々先生のところに相談に行った。

先生は教え子がまた来てくれたと嬉しそうだった。

高校を卒業してから、大学時代に一度だけ
先生の家の前を通った時に会えたことがあった。
お久しぶりですって挨拶したけど、私だってことがわかったのかちょっとわからなかった。
先生はだいぶ歳をとったような感じで、鼻毛はボーボーだった。

なんだか怖くなってそれ依頼一度も会っていない。
たくさんの生徒を教えて
その中のひとりでしかない私だけど
歳をとって記憶のキャパが小さくなるから
私なんてもうとっくにこぼれてしまっているんじゃないか。

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